■ プロジェクト概要
なんばこめじるし 通称“なんこめ”なんば CITY の南端、南海電鉄の高架下。コンセプトは「大阪南部の地元の人たちが日常的に使いこなし、愛される路面店が集まる街」。南海沿線を中心に大阪南部の413店舗を食べ歩き厳選した名店11店+1 が出店。本店移転や 2 店舗目出店(支店初出店)を中心に、個性あふれる店が集結。大阪・なんば その昔、ここには米蔵があった。日本人は、重要なものに「※=こめじるし」をつける。人々を幸せにする美味しい料理たちが、ここでひとつの“しるし”になるように。 そんな想いから “なんばこめじるし”は生まれた。
開業
:
2007年6月27日
所在地
:
大阪市浪速区難波中2-10-25
URL
:
建物構成
:
地上1階
テナント数
:
飲食12店
■ ネーミング
小山薫堂氏(放送作家・「たこやきらぼ」オーナー)
■ オープニングプロモーション
プロジェクトと当社(ケイオス)を舞台にしたドラマを制作
『なんこめ満腹物語』 ABC 朝日放送
2007 年 6 月 29 日(金)24:24~25:19 ON AIR
企画・監修:小山薫堂 出演:金子貴俊、紺野まひる、西岡徳馬 他
メディアパートナー:大阪ガス、NTT ドコモ関西
■ 主なテナント
ダイニングステージ 佐海屋/お好み焼&もんじゃ焼 百十/中華菜館 亀仙人/旬の肴と美味しいお酒 中々屋/天ぷら 大吉/本場台湾ラーメン 味仙/Sasebo Burger Plus Cafe ATA-GO/堺ラーメン塩専門 龍旗信/焼肉 まるよし/寒ざらしそば 芦生/バールオステリアLA FOGLIA del sole/たこやきらぼ
■ 当社業務内容
総合プロデュース
商業施設コンサルティング
・マーケティング
・コンセプトメイキング
・テナントリーシング
・プロモーション
「もったいない主義 不景気だからアイデアが湧いてくる!」
小山薫堂著(幻冬舎新書)から抜粋
「なんばこめじるし」PR計画
「なんばこめじるし」という大阪のフードゾーンに「たこやきらぼ」という店があり、僕はこの店のオーナーを務めています。
きっかけは、ケイオスという僕の友だちの会社から、南海電鉄の難波駅の一角に新しく十二店舗の飲食ゾーンをつくるから、それに名前をつけてほしいと頼まれたことから始まりました。経営は南海都市創造で、ケイオスはその総合プロデュースを担当していました。 新しいフードエリアといっても、よくあるチェーン店ばかりが入るようなものではありません。スタッフが何百店も食べ歩いて、本当にうまい、父ちゃん母ちゃんでやっているような店を選んで、二年くらいかけて口説き、中にはもとの店を閉めてそこに入ったような人もいて、やっと一二店舗入るところまで決まっていました。
フードエリアの名前は実際に、そこが昔、米蔵のあとだったので、「なんばこめじるし」という名前にしました。米印(※)は、大切なものにつける印という意味もあります。なんばこめじるし、略して「なんこめ」。
いよいよこの空間を外に発信することになり、そのための予算も決まりました。一二店舗のフードゾーンのためのPRフィーとして提示された額は、決して少ない額ではありませんでした。ただ、ポスターをつくったり、雑誌広告を打ったり、電車の中吊り広告を出したり、チラシを配ったりと、ふつうのPRをして使いきってしまったのでは面白くありません。
そこでちょうど電通関西支社で、いつか僕と一緒に番組をやりたいと言っている人がいたから、その人に「いいアイデアがあるんですが」ともちかけたのです。
「実は今度こういうフードゾーンができるんですけど、そこを舞台にしたドラマをつくりませんか?」 と提案したら、すぐに乗ってくれました。
ドラマのストーリーは、このフードゾーンの中に入るはずだった一店舗がドタキャンになって、急きょ別の店を入れなきゃいけなくなった。それに奔走する担当者の汗と涙の物語に恋愛話もからむ、という内容に決まりました。 ドラマのスポンサーにはNTTドコモと大阪ガスがついてくれました。それが一時間のテレビ番組、『なんこめ満腹物語』(朝日放送)というタイトルのドラマです。新しくできるフードゾーンそのものを舞台にしたドラマだから、プロダクトプレイスメント(テレビ番組や映画のなかで、企業の商品を登場させる広告の手法)としてフードゾーンが紹介できる。南海にとっては願ってもない企画です。テレビの枠を直接購入するのではなく、番組スポンサーとの新しい形のコラボレーションによって、絶大で効果的なPRができる仕組みです。 さらに、その番組のためのストーリーがせっかくあるのなら、「なんばこめじるし」の中にドラマの中で主人公が奔走した末に完成する店が、本当に入っていたら面白いじゃないかと考えました。そこで、そのドラマのためのスペースを一区画提供してほしいとお願いし、すでに決まっていた一二店舗のうち一店舗を、PR用のスペースとして使わせてもらいました。そして五坪ぐらいの小さな敷地に、ドラマのスタートに合わせて本物のたこ焼き屋をつくったのです。
なんばこめじるしは二〇〇七年六月二七日オープン、ドラマ『なんこめ満腹物語』は六月二九日の深夜の放送でした。
じゃあ、そのたこ焼き屋は誰が経営するかということになり、当初PR予算のうちの半分を開業資金に投じて、新規開店しました。どういうたこ焼きにするかとか、どういうメニューにするかなどは僕らが決めました。
実際にいまも大阪の業者の方にマネジメントを委託して営業しています。それが「たこやきらぼ」というお店です。
らぼはラボラトリー(研究所)の略で、僕は以前にも東京タワーの中に「東京カレーラボ」という店をつくったことがあったので、ラボシリーズとして名付けました。たこ焼きにしたのは、その狭い店でやっていくには何がいいかと考えた結果です。一〇人も入れば満員になってしまう小さな店なので、立ち飲みがいい。つまみにはたこ焼きがぴったりです。
もう一つ理由をいえば、僕の出身地の熊本県天草はタコが有名なので、天草のタコのPRもしてあげたかったのです。ストーリーの中では主人公がたこ焼き屋をつくるにあたり、タコといえばやはり明石だということで、明石を訪れます。実は明石のタコは、昭和三七年の赤潮で全部絶滅してしまっています。そのあと天草のタコの稚魚を放し、それが増えていまの明石のタコになっているという説があるのです。だから実はもともとは天草のタコなのです、というような話にして、故郷の天草のPRも盛り込んでしまいました。とはいえこれも頼まれたわけではなく、ただの僕のおせっかいです。
宣伝材料として、「皿にこめた人生」という文庫本風の冊子をつくり、それぞれのお店の店主の人生と重ね合わせたフードストーリーを紹介しました。ドラマの試写会を大々的に開き、いろいろな情報番組や新聞や雑誌に取り上げてもらいました。その結果、ドラマのほうも二四時二四分からという深夜の時間帯にしては破格の八・一%の高視聴率をとることができました。
伝えるためだけにお金を使うのはもったいない
僕にはどうしても、伝えるためだけにお金を使うのはもったいないと思ってしまうところがあります。お金をかけなくても、みんながあっと驚くような面白いことをやったら、それだけで人は自然に集まるものです。
PRというと、どうしても「どう伝えるか」ということにお金を使いがちですが、僕の場合は、お金を落として、そこに生まれた面白いものをみんなが見に来るようにする仕掛けをつくる、という発想をします。
いまある予算でどれだけ広告を打てるかというのは単なる足し算引き算の世界。真ん中に落としたら、掛け算みたいに相乗効果でいろいろなものが絡まって広がっていく、というイメージです。
なんばこめじるしのプロジェクトには、たくさんの人たちが関わっていますが、誰かが誰かを一方的に利用するという関係ではなく、みんながお互いを利用し合う関係をつくることができたと思っています。ハシゴのように上がっていく関係をラダリングといいますが、 お互いを高め合うこんな関係もラダリングといえるのではないでしょうか。
よく僕は、「男と女の関係はラダリングがいい」と言います。夫婦もお互いに高め合うのが一番理想的です。だからビジネスでもそういうパートナーを見つけてくるのが、一番いいというのが僕の実感です。