COLUMN

多様化とサステナビリティ時代の志ある商業施設

2020.10.06

最近気になることがある。ここ10年テナント企業の売り上げや商品単価が伸び悩むデフレ状態が続く一方テナントの出店コストは増加傾向にあることで、商業施設デベロッパーと出店テナントの共存共栄関係のバランスが崩れてきているように感じる。

そういえば2000年の大店法で開発の規制が緩和され施設が増加し自店競合含め競争の激化、同年施行の借地借家法改正による定借化で投資見通しが立ちにくくなるなどテナントにとって苦しい状況が続く。建築・設備工事、特にB工事と称される工事費などの投資回収や管理・運営はたまた原状回復まで続くコスト増が重くのしかかる。それだけではなくそもそも商品が売れなくなった状況など様々な課題がある。

時代のキーワードは、多様化(個性)とサステナブル。社会課題の解決も必要な世の中。今までの常識が通じない世の中になってきている。従来の考え方からくる危機は新しい発想にとってチャンスでもある。だからこそ我々も一度マインドチェンジして社会にとって意味のある改革をしたい。環境問題をはじめとするサステナブルな社会実現のため、身近なことから手を付け活動を具体化せねばならない。そのために真摯に行動している人をきちっとわかるように伝えていくことも我々のやるべきことの一つ。自分たちの子供、そのまた子供達のために。その地平から日頃お世話になっている商業施設業界も元気づけたい。我々の経験や編集力の総力あげて志を持ちやってみたい。必要とされる施設、わくわくする体験。そんな場づくりをこれからもより一層やっていきたい。

再定義の時代

2019.06.01

(コロナ禍前に書きました)

イスラエル人歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏の著書「サピエンス全史」「ホモ・デウス」が話題になっている。彼が述べているように、人類はどこに向かうか興味深い。そこまでの先の話ではないが、我々の身近にもシンギュラリティと考えられるような変化が数多く起きている。

商業施設に店舗以外の機能が増加している。施設内にEC用のショールームや宿泊できる施設は言うに及ばず、シェアオフィスまで入居してきている。またアウトレットモールにアウトレット以外のプロパー業態、一方では、公園や駅・図書館の中に店舗、ついでに言うと元来駅のないところに創意工夫して考えられた、いわゆる“道の駅”が駅に併設されたり、ネット企業がリアル店舗をつくったり、不動産企業がECモールに進出したりしている。従来型の定義ではおさまらない事があらゆるところで起きている。

コト消費が注目されているが、そう言えば、1989年に発刊された水野誠一(元西武百貨店社長)著「ネオ・アキンドノオト」には、はっきりと「物」から「コト」の時代になると記されている。

30年前から耳にしていたコトが今、盛んに述べられている。モノは人の概念から飛び出しにくく、コトは人の概念をいともかんたんに早く超えてしまう。そんな時代ゆえに既成概念にとらわれず、伝統や文化を大切にしながらも、思考が広がり、加えてそれを前進させるためにも“再定義”が求められている。
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